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少年たちを襲い、東京中を恐怖させた迷惑集団「白袴隊」とは? 明治期の“性加害”事件

炎上とスキャンダルの歴史

■少年をねらう事件が頻発していた麹町区(現在の千代田区の一部)

 

 明治35年(1902年)327日、東京・麹町区で風呂屋帰りの11歳の少年が何者かに殺害され、その臀部(でんぶ)の肉が切断されて持ち去られたという猟奇殺人事件が起きたのです。

 

 少年と臀部――つまりお尻への異様な関心から、「白袴隊の中に犯人がいるのではないか」という憶測が新聞を通じて世間に広まり、さすがの白袴隊も解体せざるをえなかったようですね。後に見つかった真犯人は、野口男三郎(のぐちおさぶろう)という狂人で、白袴隊との関係はありませんでしたが……。

 

 野口は、ハンセン病の兄を持つ曽恵子という女性と結婚しようとしていました。当時、ハンセン病は特定の家系の遺伝病だと考えられ、それゆえ、結婚を親族から反対されていたのです。野口は人間の尻の肉がハンセン病を治癒させる秘薬という俗説にすがったのですが、なんとも物騒な話ですね。

 

 ちなみに今回、事件の舞台として「麹町区」が2回も出てきましたが、学校が多く、当時は少年たちを狙った犯罪が多発していました。明治期の麹町区といえば、皇居にも近く、富裕層の邸宅が立ち並ぶ高級住宅街として知られた地区ですが、美しい街並みにそんな恐ろしい側面が隠されていたとは驚きですね。

 

 

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堀江宏樹ほりえひろき

作家・歴史エッセイスト。日本文藝家協会正会員。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。 日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)、近著に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)、『こじらせ文学史』(ABCアーク)、原案・監修のマンガに『ラ・マキユーズ ~ヴェルサイユの化粧師~』 (KADOKAWA)など。

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